子どものつらさは環境からの圧力によるもの
思春期の子どもたちの多くは、大人から見た困り事や問題行動を理由に精神科を受診します。しかし、子どもたち自身が本当につらさを感じていることは、大人の目から見た症状や問題行動ではないのです。
子どもたちのつらさの原因は、普段、生活を送っている家庭や学校といった環境から受ける様々な圧力や軋轢なのです。
親、友達、教師との関係性の問題や、勉強や部活などをめぐる問題が大きなウェートを占めます。診察では、それらに焦点を当てながら丁寧に話を聞くことになります。ですから、子どもたちの治療では症状や診断に合わせて、医学的な助言を行って、薬を処方すれば事足りるというわけでは決してないのです。
子どもたちは自分のつらさを受診直後から話してはくれません。大人はすぐに原因を探ろうとして、根掘り葉掘り聞き出そうとしますが、そのようなことは避けなければなりません。時間をかけて関係が深まる中で、少しずつ語ってくれるのを待つことが必要になります。
症状に見る子どもの「守り」の役割
子どもたちが示す症状や問題行動は、彼らが家庭や学校で直面した困難な問題によって、自分の心がこれ以上深く傷つかないようにする「守り」の役割を担っています。
このまま大変な状況が続くと、心が壊れてしまうので、そうならないように自分自身で何とかしようとした結果なのです。ですから、症状をすぐに取り除こうとするのではなく、ある程度の時間をかけながら、子どもたちが「守り」としての症状を必要としなくなるまで待つことがとても大切になります。
全ての問題を発達障害のせいにしない
思春期になって初めて医療機関を受診する発達障害の子どもたちの場合、不安、強迫、抑うつ、不登校、自傷などの様々な症状を示しています。そして、診察の結果、これらの症状の背景に発達障害の特性があることが明らかになります。彼らは障害特性が軽微であるために、幼児期や児童期に医療や福祉につながることなく経過してきた子どもたちといえます。
しかし、彼らに対して、障害特性ばかりに目を向けることは避けたいものです。不登校であれば、「障害特性のため、集団生活が苦手であるから学校生活に溶け込めなくて当然」という見方をしたくないのです。彼らの悩み事を障害特性にすぐに結びつけず、思春期の心性に基づいた反応としてとらえ、理解するべきです。そうすると、思春期に至って同世代の仲間と関係を築くことで悩んでいる姿が見えてきます。そこから子どもたちが抱える困難さを乗り越える糸口が見つかる可能性が広がるように思えます。
まとめ
子どもの心の声には、環境からの圧力や困難への対処という「守り」の役割、そして発達障害に対する偏見や見逃しを避ける重要性があります。子どもたちが抱える問題を理解し、個々の状況に適したサポートと理解を提供することが大切です。
FAQ
Q:子どものつらさを理解するためにはどうしたらいいですか？
A:子どものつらさを理解するためには、時間をかけてコミュニケーションを深めることが重要です。子どもたちが自分の感情や悩みを話しやすい環境を整えることが大切です。
Q:発達障害の子どもたちに対して何をすればいいですか？
A:発達障害の子どもたちに対しては、障害特性だけでなく、その子の思春期や個性を考慮したアプローチが必要です。彼らの悩みや困難に寄り添い、適切なサポートを提供することが重要です。