赤ちゃんは、口のなかに入ってきたものを強く吸い込む「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」を持って生まれてくる。それは単に授乳のためだけでなく、吸啜することで癒しと落ち着きを得ることができるから。
この自然な欲求を満たすため、あるいは授乳や昼寝の合間の赤ちゃんのぐずりを減らすため、眠りにつきやすくなるなどの理由から、多くの親たちが赤ちゃんにおしゃぶりを与えるという選択をとっている。
月日が経つにつれ、おしゃぶりを吸わせることは社会的により受け入れられるようになってきたとはいえ、おしゃぶりに関する疑問は依然として多く寄せられている。例えばこんな質問。発育中の歯に悪影響はないの? 赤ちゃんがおしゃぶりを口に入れたまま寝ても問題ないの?
そこで、おしゃぶりを与えるメリット・デメリット、注意点をきちんと理解しておくために、今回詳しく説明してくれたのは、母乳と哺乳瓶での授乳の問題解決を専門とする看護師であり助産師のクレア・バイアム=クックと、オーラルケアのコミュニケーター兼コンサルタントを務める歯科医のアン・メッテ医師。
おしゃぶりの種類にはどんなものがある?
おしゃぶりには大きく分けて「対称型」「平型」「丸型」の3つの種類があり、主におしゃぶりの先端(ニップル)の形状によって分類されている。丸型のおしゃぶりは、おっぱいと同じような口の動きで吸うことができるように設計されているもので、赤ちゃんの乳頭混乱を防ぐことができる。平型のおしゃぶりは「歯列矯正用おしゃぶり」とも呼ばれ、ニップルが平べったく赤ちゃんの口によりフィットするように設計されている。
おしゃぶりの形状に優劣はなく、基本的には赤ちゃんの好みで決めてよい。おしゃぶりの形状により歯と口蓋に異なる影響を与えるが、どの形状であれ歯並びの問題や“おしゃぶり歯(pacifierteeth)”と呼ばれる歯の問題が生じてしまう可能性はあるという。
“交叉咬合”、“開咬”、その他の“不正咬合”(正常でない噛み合わせの状態)を含め、これらの用語は歯の噛み合わせのズレを説明するために使われる。こうした歯の問題は、おしゃぶりを使用している年長児によく見られるもので、3歳前におしゃぶりをやめていればこの問題は回避できるそう。
おしゃぶりにはラテックス(天然ゴム)製とシリコン製がある。天然ゴム製は、パラゴムノキから採取した樹液(白乳化液)を原料とする天然素材のもので、弾力性に優れ、母親の柔らかい乳首によく似ている。シリコン製は工業的に製造された低刺激性かつ無臭、無味の素材で、純度が高いことでも知られている。
どのタイプのおしゃぶりも、ニップル、シールド、リングという3つの主要なパーツで構成される。ニップルは柔らかく快適な使い心地に設計されており、シールドはおしゃぶり全体を口のなかに入れてしまうのを防ぐ役割がある。シールドは、空気穴があるものを探すことが大切。これにより、赤ちゃんの唾液がシールドの後ろに溜まったり、肌への刺激やかぶれの原因を防ぐことができる。
リング部分は取っ手として使え、おしゃぶりの付け外しが簡単になる。さらにクリップを取り付けることで床に落ちたり紛失してしまうのを防ぐこともできる。どのタイプのおしゃぶりを選んだとしても、最初の使用時には必ず滅菌してから使うこと。必要に応じて、温かい水で洗浄するようにしよう。
おしゃぶりをしたまま寝ても大丈夫? 赤ちゃんの入眠/睡眠にどんな役割がある?
「赤ちゃんは吸うことを本能的に求めています。また、おしゃぶりを吸うことは赤ちゃんに落ち着きをもたらし、眠りにつきやすくなることでも知られています」とクレアは説明する。「赤ちゃんの睡眠習慣の一環としておしゃぶりを導入するのであれば、赤ちゃんが寝るたびに使用し、通常の睡眠習慣として取り入れるべきです」
おしゃぶりから卒業させるタイミングは?
ベビー用品メーカー「MAM(マム)」の専門家でもあるクレアいわく、このブランドのおしゃぶりは成長する子どもの顎の発達に合わせてさまざまサイズが展開されており、最長で3歳まで使用可能。
「小児歯科医や医療専門家の多くは、歯列矯正用おしゃぶりの使用を推奨しています。おしゃぶりから離れるのは、指しゃぶりをやめるよりもずっと簡単だからです」とクレア。
おしゃぶりは赤ちゃんの歯に影響する?
「多くの歯科医はおしゃぶりの使用を支持しています。乳児に安心感をもたらし、自分で自分を落ち着かせる効果を得られるからです。親にとってはおしゃぶりが救世主になることもあります」と説明するのは、北欧デンマークのベビーブランド「BIBS(ビブス)」を支持するアン医師。
「おしゃぶり歯の深刻さは、子どもがおしゃぶりを使用する習慣の長さと強度によるものです。おしゃぶりを吸う習慣によって顔や顎の構造に与える影響が長くて強いほど、交叉咬合、開咬、不正咬合が生じるリスクは高くなります」
「研究者たちは、歯の噛み合わせのズレを予防するうえで、歯列矯正用おしゃぶりと従来の丸型のおしゃぶりのどちらが優れているかを示す証拠は十分にないと主張しています。幼児のおしゃぶりの使い方次第で、どの形状のおしゃぶりを使用しようと歯になんらかの影響を及ぼす可能性はあります。すべては使い方次第です。3歳になる前におしゃぶりの使用をやめられていれば、通常歯は自分で修復することができます」
「おしゃぶりはラテックス製とシリコン製とありますが、どちらの素材もどちらか一方より優れているということはありません。あなたとあなたの赤ちゃんの好みによります」
赤ちゃんがおしゃぶりの恩恵をもっとも得ることができる時期は?
「一部の親は、胃食道逆流やコリック(黄昏泣き)に苦しむ新生児の症状を緩和し、不安定な赤ちゃんを落ち着かせるためにおしゃぶりを導入しています」とクレア。「赤ちゃんの睡眠習慣を確立するうえでも非常に役に立つ場合があります。他にも、特定の赤ちゃんの場合ですが、具合が悪いときや抵抗したりするとき(車の座席に座らせるときなど)に、おしゃぶりが効果的に作用する場合があります。これらもすべて、個々の赤ちゃんのニーズ次第です」
おしゃぶりに代わるものはある?
「おしゃぶり無しで落ち着くことができる赤ちゃんもいますし、指を吸うことで吸いたい自然な欲求を満たす赤ちゃんもいます」とクレア。
「医療専門家の多くは、指を吸う代わりに歯列矯正用おしゃぶりを使用する方が好ましいと強調しています。親指しゃぶりが長く続くと、顎や歯の形が変形し、発話の問題につながることも多い一方で、おしゃぶりは穏やかにやめさせることができるからです」
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text:EMMAGRITTTranslation:YukieKawabata
まとめ
赤ちゃんにおしゃぶりを与えることは、落ち着きや眠りにつきやすくなるなどのメリットがありますが、適切な使用方法や卒業のタイミングを考慮する必要があります。また、おしゃぶりの形状や素材によっても影響が異なるため、赤ちゃんの好みや状況に合わせて選ぶことが大切です。
よくある質問
- Q:おしゃぶりをしたまま寝ても大丈夫ですか?
- A:おしゃぶりは赤ちゃんに落ち着きをもたらし、眠りにつきやすくなるため、寝るときに使用しても問題ありません。
- Q:おしゃぶりから卒業させるタイミングは?
- A:歯列矯正用おしゃぶりを使用している場合は、成長に合わせてサイズを変えながら、3歳まで使用することができます。その後は穏やかにおしゃぶりをやめさせることが推奨されています。
- Q:おしゃぶりは赤ちゃんの歯に影響する?
- A:おしゃぶりの使用方法や習慣によって影響は異なりますが、適切な使用や3歳までにやめさせることで、歯の影
[ad_2]
コメント