近年、幼児の健康に関する研究が進み、腸内細菌叢の乱れ（dysbiosis）と自閉症スペクトラム障害（ASD）との関連について注目が集まっています。台湾・TaichungVeteransGeneralHospital／ChungShanMedicalUniversityのYi-FengLee氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース（NHIRD）を用いた研究で、腸内細菌叢を変化させる可能性がある便秘とASDの発症リスクとの関連を検討しました。その結果、3歳以下の便秘を有さない幼児と比べて便秘を有する幼児ではASD発症リスクが有意に高かったことがわかりました。
緩下剤処方の重症例でリスク2倍以上
Lee氏らは、NHIRDの1997～2013年のデータから便秘と診断された3歳以下の幼児1万2,935例（便秘群、女児53％）を特定し、便秘を有さない幼児（対照群）との比較を行いました。その結果、便秘群ではASD発症リスクが有意に高かったことが示されました。また、便秘の重症度（緩下剤の処方なし、1～2回、3回以上）で層別化した解析では、重症例ほどASD発症リスクが増加していることが明らかになりました。
男性、アトピー、アレルギー性鼻炎でもリスク上昇
さらに、男性、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎もASD発症リスクの上昇と有意に関連していることが報告されました。これらの結果は、便秘が腸内細菌叢の構成に大きな影響を及ぼし、ASDの発症リスクに関与している可能性を示唆しています。感度分析でも一貫して認められた関連性は重要な研究成果と言えます。
まとめ
今回の研究から、幼児期の便秘が腸内細菌叢の乱れを招き、ASD発症に関与している可能性が示唆されました。便秘を有する乳幼児においては、ASDなどの神経発達障害のリスクに注意が必要です。腸内細菌叢の変化は、母体の薬物使用や代謝性疾患、遺伝子発現などの他のASD危険因子と比べて治療、分析、予防できる可能性が高いことが示唆されています。
FAQ
1.幼児の便秘のリスク要因は何ですか？
幼児の便秘には色々な要因が関与していますが、本研究では腸内細菌叢の乱れがその一因である可能性が示唆されています。他にも遺伝的要因や生活習慣なども影響する可能性があります。
2.なぜ男性やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などがASD発症リスクと関連しているのですか？
男性やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などがASD発症リスクと関連している理由については、詳細なメカニズムは分かっていませんが、本研究で示された結果を踏まえると、腸内細菌叢の影響が考えられます。
3.どのようにして便秘を予防することができますか？
便秘を予防するためには、バランスの取れた食事や適切な水分摂取、適度な運動などが重要です。また、定期的な健康診断や医師の指導を受けることも大切です。